カウンセラーとの相性は、どう考えればよいですか

カウンセリングを受けようと思ったとき、
「このカウンセラーは自分に合うだろうか」
ということは、気になることの一つだと思います。

ホームページを見れば、資格や経験、どのような心理療法を行っているか、どんな相談を多く受けているかなどは、ある程度わかります。

けれども、

「この人と話していけそうか」

ということは、プロフィールだけではなかなかわかりません。

私は、カウンセラーとの「相性」は、単に性格が合うかどうかということではなく、そのカウンセラーとの間に、どのような関係がつくられていくかということと深く関わっていると考えています。

最初から「相性のいいカウンセラー」を見極める必要はありません。最初に会ったときに感じるものを手がかりにしながら、実際に関係を重ねる中でわかってくることもあります。

カウンセラーとの関係は、カウンセリングの効果にも影響する

心理療法では、どのようなアプローチを用いるかだけでなく、クライエントとカウンセラーの間にどのような関係がつくられるかも大切です。

心理療法の研究では、クライエントとカウンセラーが、目標や取り組むことについて共有し、信頼できる関係を築けていることを「治療同盟(therapeutic alliance / working alliance)」と呼びます。

多くの研究をまとめたメタ分析でも、治療同盟の質と心理療法の成果には一貫した関連があることが報告されています。これは、特定の心理療法だけではなく、さまざまなアプローチを通して認められている知見です。

ですから、どの心理療法を選ぶかと同じように、

「このカウンセラーと一緒に取り組んでいけそうか」

ということも、大切にしてよいと思います。

最初の「なんとなく」の感覚も大切

実際に会ってみたときに、

「なんとなくホッとする」
「この人には少し話せそう」

と感じることがあります。

反対に、

「なんとなく構えてしまう」
「理由はうまく説明できないけれど、何か違う」

と感じることもあります。

こうした「なんとなく」の感覚について、私自身、とても印象に残っている経験があります。

以前、心理療法のトレーニングを受けていたとき、あるやりとりの中で、

「動画を見ているような感じがする」
「相互のやりとりがなく、一人でポツンと画面に向かっているように感じる」

と伝えたことがありました。

でも、何を見てそう感じたのか、なぜそう思ったのか、自分でも説明できませんでした。

そのとき、

「説明できなくてもいい。あなたの身体がそう感じていたのだから、そのことが大事なんです」

と言ってもらいました。

この言葉は、今でも印象に残っています。

私たちは、自分が感じたことについて、「なぜそう思ったのか」を説明できないと、その感覚を信じてはいけないように思うことがあります。

けれども、人と人との間では、言葉になるより前に、身体が何かを感じ取っていることがあります。

もちろん、その一瞬の感覚だけで、「このカウンセラーは合う/合わない」と決める必要はありません。

でも、

「この人と一緒にいるとき、自分はどんな感じがするだろう」

ということは、相性を考える一つの手がかりとして、大切にしてよいと私は思っています。

相性は、関係を重ねる中でわかってくることもあります

一方で、最初の印象だけで相性のすべてが決まるわけでもありません。

私がベースにしているAEDP®️という心理療法では、相手の状態やペースを細やかに捉えて合わせていくことを、アチューンメント(attunement)と呼びます。私自身も、クライエントの方に何度かお会いする中で、アチューンメントの精度が上がっていくことが多いと感じています。

初めからすっと波長が合うこともあれば、何度か会ううちに、二人にとってちょうどよいペースがわかってくることもあります。

クライエントの方にとっても、

「この人はこういうふうに聞いてくれるんだ」
「ここでは、こんなことを言っても大丈夫なのかもしれない」
「うまく話せなくても、待っていてくれるんだ」

と、実際のやりとりを重ねる中でわかってくることがあるのだと思います。

カウンセラーとの相性には、実際に二人で関係を重ねてみなければわからない部分もあります。

「何か違う」と感じたときも、大切な手がかりになります

何度か会って関係ができてきても、いつも「ぴったりわかってもらえた」と感じられるわけではありません。

残念ですが、人と人との関係では、どうしてもズレが起きることがあります。

カウンセリングの中でも、カウンセラーに対して、

「今の言い方はちょっと嫌だった」
「わかってもらえていない気がする」
「何か違う」

と感じることがあるでしょう。

カウンセラーも間違えることがありますし、その方の体験をいつも正確に理解できるわけではありません。

大切なのは、ズレが一度も起きないことではなく、ズレが起きたときに、そのことを二人の間で扱うことができるかどうかだと私は考えています。

もし言えそうであれば、「さっきの言い方は少し嫌でした」「なんだか違う感じがしました」と、そのまま伝えていただいて構いません。

そして、そのときカウンセラーが、

「こういうつもりでした」

と自分の意図を説明することを急ぐのではなく、

「私とのやりとりの中で、この方は何を感じたのだろう」

と、クライエントの方がそこで体験したことに一緒に目を向け、その痛みや違和感のところに一緒にいられることを、私は大切にしたいと思っています。

そうしたやりとりが、「違っても伝えていい」「わかってもらえないことがあっても、もう一度わかり合おうとすることができる」という経験につながることもあります。

ズレが起きたときに二人の間で何が起こるかも、そのカウンセラーとの関係を知る一つの手がかりになります。

それでも「合わない」と感じるときには

だからといって、違和感があっても我慢して続けた方がよいということではありません。

何度か会っても、安心して話せる感じがしない。
自分の話を受け取ってもらえている感じがしない。
カウンセラーの価値観を押しつけられているように感じる。
違和感を伝えても、きちんと取り合ってもらえなかった感じが残る。

そういう場合には、別のカウンセラーを探すことも一つの選択です。

「自分がもっと頑張って合わせなければ」と考える必要はありません。あなたの感覚を大事にして大丈夫です。

どちらかが悪いということではなく、別の人となら、もっと取り組みやすいこともあります。

最初の感覚と、その後の関係の両方を手がかりに

最初から、

「この人が自分にとって本当に合うカウンセラーなのか」

を見極めるのは難しいことだと思います。

まずは、

「この人とは少し話せそう」
「もう一度会ってみてもよい気がする」

という、最初の「なんとなく」の感覚を、一つの手がかりにしてよいと思います。

そして何度か会っていく中で、自分とこのカウンセラーとの間に、どのような関係がつくられていくのかを確かめていく。

「ここでは少しずつ自分でいられる気がする」
「この人は自分をわかろうとしてくれている感じがする」
「二人の間にズレを感じたときにも、それを一緒に見ていけそうだ」
「この人と一緒なら、今までとは少し違う感じ方や関わり方を経験できるかもしれない」

そんな感覚は、実際に関係を重ねてみて初めてわかるものでもあります。

最初に感じる「なんとなく」も、その後、二人の間にどのような関係がつくられていくかも、カウンセラーとの相性を考える大切な手がかりになると私は考えています。

参考文献

Flückiger, C., Del Re, A. C., Wampold, B. E., & Horvath, A. O. (2018). The alliance in adult psychotherapy: A meta-analytic synthesis. Psychotherapy, 55(4), 316–340.