定型文ではなく、自分の言葉を添えたくなった話|クライエントの方から手紙を受け取って
前回の記事では、
クライエントの方から贈り物をいただいた体験を通して、
感謝を受け取ることや、カウンセラーにとっての境界について考えてみました。
実は、同じように印象に残っている出来事がもう一つあります。
それは、あるクライエントさんからいただいた一通の手紙のことです。
その手紙には、近況報告と感謝がその方なりの言葉で綴られていました。
私はとても嬉しく読みました。
当時の職場では、こうした手紙への返信は定型的な文面を用いることになっていました。
もちろん、それには大切な意味があります。
特別な関係になりすぎないこと。
境界を守ること。
カウンセラーにとって大事な姿勢です。
ただ、その時だけは少し迷いました。
この方は、
私との時間の中で何かを感じ、
その思いを言葉にして届けてくださったのだろう。
そう感じたからです。
自分の言葉を一言添えた
そこで私は、
定型文に加えて、短い一文だけ、
自分の言葉を添えました。
たしか、
自分を理解することは、
一番難しいことかもしれませんね
そんな意味の言葉だったと思います。
後日、
その一文に対して、深い共感を伝えてくれる返信が届いたのです。
私はそこで、
ああやはり、私自身からの言葉がその方に届いたんだなと、
迷いながら書き添えた一文が、
その方にとって小さな灯火くらいになったかもしれないなと、
少し安堵したのを覚えています。
当時の私は、
なぜあの一文を書きたくなったのか、
その一文がクライエントの方にとってどんな意味があったのか、
臨床的な意味を正直よく分かっていませんでした。
ただ、
私の中に何かを感じてくれたのなら、
私自身からの言葉が、その方にとって何かしらプラスになるのではないかという、
予感のようなものだけはありました。
AEDP®️を学んでから振り返ると
AEDP®️を学び始めてから、この出来事を思い出すことがあります。
AEDP®️では、セラピストの真正性(authenticity)をとても大切にしますが、
authentic(オーセンティック)とは、
飾らず、
正直で、
ありのままの自分でいること。
セラピストが、自分自身の感情や反応を感じながら、
目の前の人の体験と共にいようとする姿勢。
それは決して、
何でも思ったことを伝えることでも、
完璧なセラピストでいることでもありません。
今振り返ると、
あの出来事は真正性のある応答だったのかもしれないなと思います。
自分自身の感じたことを大切にして応答してみたら、
その方もまた、ご自身の言葉でさらに応答してくださった。
真正性(authenticity)のある応答に、
真正性のある応答が返ってきた出来事だったように感じています。
心理臨床の専門家としての姿勢や境界は大切です。
けれど同時に、目の前の人との関係の中で感じたことを大切にしながら、
一人の人間として誠実に関わろうとすることにも意味がある。
AEDP®️を学んでいると、専門家としてのあり方と、人としてのあり方を切り離さなくていいのだと教えてもらっているような気がします。
あの時のやり取りを思い出すたびに、そんなことを感じるのです。
※本記事で触れているAEDP®に関する内容は、私自身の学びと体験に基づく個人としての発信です。特定の団体や組織の立場を代弁するものではありません。
この記事を書いた人
町田美佳|臨床心理士・公認心理師|マチダ心理臨床オフィス(市ヶ谷・麹町・四ツ谷)
愛着や人間関係、生きづらさ、支援職の悩みなどについて、感情や身体感覚を大切にした心理カウンセリングを対面とオンラインで行っています。