カウンセリングで大切にしていること|完璧でいなくてもいい、揺れながら誠実でいる関わり方
支援の場や、人と関わる中で、
「どうあるか」
「どのように関わるか」
について、自分自身の内側を確かめるようにこころがけています。
カウンセリングの場では、
適切に関わることや、
うまく応答すること、
常に整っていることが大切だと思われるかもしれません。
けれど実際には、
揺れずにいることや、常に最善の状態でいることが
大切なのではない、そう感じています。
むしろ、
うまくいかない感じや、
一瞬わからなくなる感じ、
揺れるような感覚を持ちながらも、
そのままそこにいようとすること。
そのこと自体が、とても大切な要素になるのではないかと思っています。
何かを整えてから関わるのではなく、
そのときに起きていることを、
ごまかさずに受け取りながら関わること。
そのようなあり方の中で、
少しずつ、関係の中に違う感じが生まれてくる。
私は、そのことを大切にしています。
「authentic(オーセンティック)」とは、揺れを抱えたまま誠実でいること
先日、AEDP®(加速化体験力動療法)のグループスーパービジョンで、私自身がクライエント役を務めていたときのことです。
ロールプレイとはいえ、安心できる場では、自分の素の部分が自然と現れてきます。
セラピスト役の方が、私の話を聴きながらこんな質問をしてくれました。
「それは、authentic(オーセンティック)なセラピストでありたい、
ということではないでしょうか。
あなたにとってauthenticなセラピストとはどんな存在ですか?」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に静かに響くものがありました。
少しの間、自分の内側を探ってみると、こんな思いが浮かんできました。
「セラピストはクライエントがいて初めて存在できる。
クライエントが、私の良い部分を引き出してくれている。
self-at-best(最善の自分)でいさせてくれてありがとう。」
そう言葉にしたとき、胸がいっぱいになりました。
「authentic(オーセンティック)」とは、
飾らず、
正直で、
ありのままの自分でいること。
セラピストが、自分自身の感情や反応を感じながら、
目の前の人の体験と共にいようとする姿勢でもあります。
それは決して、「完璧でいること」ではありません。
揺れたり、
迷ったり、
わからなくなったりする自分を否定せず、
それでも誠実であろうとすること。
つまり、
「authentic」とは、揺れを抱えたまま、誠実にそこにいようとすること。
私はそう理解しています。
self-at-best(最善の自分)は、関係の中で生まれる
AEDP®では、self-at-best(最善の自分)という言葉がよく使われます。
穏やかで、
共感的で、
オープンで、
感情と理解のバランスが取れている状態。
反対に、不安や焦り、怒りから防衛的になっている状態は、self-at-worst(最悪の自分)と呼ばれます。
AEDP®創始者ダイアナ・フォーシャのイマージョンコースで、今でも深く印象に残っている言葉があります。
「私たちも人間ですから、常に self-at-best でいられるわけではありません。
でも、少なくともセッションの間は self-at-best でいられるように。
クライエントにとっての true other(真に寄り添う他者)でいられることを大切にしましょう。」
この言葉を聞いた時、受講者全体がふっと安堵したように感じました。
「完璧でいなくていい。
誠実であればいい。」
そう思えた瞬間、セラピストとして少し楽に呼吸ができたことを覚えています。
関係の中で、人は「最善の自分」を取り戻していく
私がロールプレイ体験で気づいたのは、
クライエントの存在が、私自身の self-at-best を引き出してくれている
ということでした。
そしてその背景には、
自分の揺れや不安を否定せず、
そこにいようとする authentic な姿勢がある。
その誠実さがあるからこそ、
関係の中で、
温かく、
オープンな、
最善の自分が自然と立ち上がってくるのかもしれません。
カウンセリングの中では、
「人が人と出会う」
そんな本質的な瞬間が訪れることがあります。
そこでは、
クライエントの誠実さ(authenticity)と、
セラピストの誠実さ(authenticity)が響き合い、
こころの琴線が触れ合うような、
静かで深い共鳴が生まれることがあります。
その瞬間こそ、self-at-best な関係。
そしてそれを通して、セラピストもまた癒され、成長していけるのだと思います。
クライエントと共にいることで、自分自身の self-at-best に立ち返っていく。
それは、セラピーという営みの中で起こる、小さな奇跡のようです。
私は、そのような体験を丁寧に見つめていくことを大切にしています。
authenticであることと、self-at-bestであること
ここまで書いてきて感じるのは、
authenticであること と self-at-bestであること は、別々の概念のようでいて、誠実さの異なる側面なのかもしれない、ということです。
authenticity は、
自分に正直であろうとする誠実さ。
揺れや迷い、不完全さを否定せず、そこにいようとする姿勢とも言えるかもしれません。
一方で self-at-best は、
その誠実さが、他者との関係の中で立ち上がる姿。
穏やかさや開かれた感覚、最善の自分は、一人で達成するものではなく、関係の中で引き出され、生まれてくるものなのだと思います。
揺れながらも、真摯にそこにいようとすること。
その努力の中に、セラピーの本質があるのかもしれません。
そして、その瞬間に立ち会いながら、
私自身もまた、クライエントとの関係の中で育てられている。
そんな感覚を持つことがあります。
完璧でなくてもいい。揺れながら、自分らしくいられる関係へ
もし、
人前でいつも気を張ってしまう
「ちゃんとしなければ」と力が抜けない
自分に厳しくなりすぎる
人との関係で疲れやすい
安心して揺れられる場所が少ない
そんな感覚があるなら、
「完璧でいなくても大丈夫」
「揺れながらでも、誠実でいられる」
そんな新しい感覚を、一緒に見つけていけるかもしれません。
当オフィスでは、東京・市ヶ谷/麹町/四ツ谷エリアにて、感情や身体感覚を丁寧に扱う体験型の心理カウンセリングを行っています(オンラインでも大丈夫です)。
少し時間を取って、ご自身のことを見つめてみたいと感じられた方は、どうぞご覧ください。
この記事を書いた人
町田美佳|臨床心理士・公認心理師|マチダ心理臨床オフィス(市ヶ谷・麹町・四ツ谷)
愛着や人間関係、生きづらさ、支援職の悩みなどについて、感情や身体感覚を大切にした心理カウンセリングを対面とオンラインで行っています。
※本記事で触れているAEDP®に関する内容は、私自身の学びと体験に基づく個人としての発信です。特定の団体や組織の立場を代弁するものではありません。