感情は「キャッシュクリア」できる?|心が軽くなるプロセスについて
感情に向き合うことは、
怖くて難しい、
ずん、と重たく感じられることがあります。
考えても整理できない。
同じところをぐるぐるしてる感覚。
理由はわかったとしても、
身体はついてこない。
向き合おうと決心しても、逃げ出したくなる。
そんな経験はないでしょうか。
ある日のカウンセリングで、
クライエントの方が、
ふと、こんなことを話してくれました。
「なんか……感情って、“キャッシュクリア”みたいです」
そう言いながら、
手で さっ と払うように動かして、
「もういらないキャッシュデータを見つけて、
シュッと消して、
キャッシュクリア!」
と、どこかコミカルな調子で説明してくれたのです。
その様子が少し意外で、
思わず二人で笑ってしまいました。
心にも「溜まりすぎたキャッシュ」のようなものがあるのかもしれない
スマートフォンやパソコンでは、
一度読み込んだ情報を、
次に速く処理できるよう保存する仕組みがあります。
それがキャッシュ。
便利な機能ですが、
溜まりすぎると、
動作が重くなることがあります。
心も、
少し似ているのかもしれません。
かつて必要だった感情。
感じきれずに押し込めたもの。
言葉にならないまま残った反応。
そうしたものが、
気づかないうちに積み重なり、
気持ちや身体の動きを重くしたり、
どこかでエネルギーを奪っていることがあります。
感情を感じきると、「波がおさまる」ような瞬間がある
押し込めてきた感情を
そっと見つけて(認識して)、
そのまま感じきると(処理が終わると)、
その感情はまるで役目を終えたかのように、
“シュッ” と消えるように、
軽くなる瞬間があります。
波がおさまるような。
AEDP®では、こうした変化を、
感情が十分に体験され、処理されたあとに訪れる静けさ
として捉えることがあります。
そしてそのあと、
自然と言葉が生まれます。
「穏やかな感じです」
「動ける感じがします」
そんな言葉がそっとこぼれる時、
心の奥底にあった感情のキャッシュデータが確かにプロセスされ、
役目を終えて、静かに落ち着いたのだと感じることがあります。
「私は、この機能を実装しました」
そして最後に、
その方は少し身を起こしながら、
こんなふうに言いました。
「私は、この機能を実装しました」
いつもとは少し違う、
軽やかで、
どこかプレイフルな響きをまとって。
その一瞬のユーモアが、
とても嬉しい驚きでした。
ああ。
今の比喩の中に、ご自身が
「感情とつき合える感覚」
を確かにつかみ始めているのだな。
そう感じた瞬間、
私の胸にもあたたかい喜びが広がりました。
プレイフルな言い方に、
二人でふっと笑い合えたあの時間は、
私にとって宝物のような瞬間でした。
感情に向き合うことは、「苦しみ続けること」とは違う
感情に向き合うことは、
ずっと苦しみ続けることではありません。
時には、
「あ、こういうことかもしれない」
そんなふうに、
自分なりの比喩や理解が生まれた瞬間に、
心がふっと軽く動き始めることがあります。
その時生まれる小さなユーモアや、
「できた」という確かな感覚。
私は、そこから生まれる温度をとても大切に感じています。
カウンセリングの中でも、
押し込められてきた感情を無理に変えようとするのではなく、
その感情が本来持っていた意味を見つけ出してあげられるように、
少しずつ、安心して感じられるようになる過程を大切にしています。
もし、
考えすぎてしまう、
同じ感情を繰り返して苦しい、
理由はわかるのに軽くならない——
そんな感覚があるなら、
そこには、
まだ見つけてもらえていない「大切な何か」が残っているのかもしれません。
あなただけの「しっくりくる感覚」を、一緒に見つけていく
感情に向き合うプロセスの中でふいに生まれる、
軽やかで、キラッと光る瞬間。
そのひとつひとつが、
本当に素敵だと感じています。
「カウンセリングで感情に向き合う」と聞くと、
「うまく説明しなければいけないのかな」
「何か大きな感情を出さなければいけないのかな」
と身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、決してそんなことはありません。
今回のように、
ご自身の馴染みのある比喩や言葉で、
「あ、こういうことかもしれない」
と腑に落ちる瞬間が訪れることがあります。
その理解は、
単なる“気づき”ではなく、
これまでひとりで抱えてきたものを、
少し違う形で持ち直せるようになる感覚につながることがあります。
今、
心や身体が重く感じる方へ。
理由はわかるのに動けない。
同じ感情や考えを繰り返してしまう。
あるいは、
重さそのものにも慣れてしまって、
何が苦しいのかよくわからなくなっている——。
そんなこともあるかもしれません。
その重さを急いで消そうとするのではなく、
まずは、
そこに何が残っているのだろう。
それはどんな役割を果たしてきたのだろう。
そんなふうに、
一緒に眺めるところから始めてみませんか。
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※本記事のエピソードは、ご本人の許可を得たうえで、特定されないよう内容を再構成しています。また、クライエントの方の補足を反映した共作の一編です。
※本記事で触れているAEDP®に関する内容は、私自身の学びと体験に基づく個人としての発信です。特定の団体や組織の立場を代弁するものではありません。