人の機嫌に影響されなかった日|安心感は身体から育つ

美味しいうどんを食べた帰り道のことです。

行ってみたいと思っていた珈琲店の前を通りかかると、
店内に誰もいないのが見えました。

「今なら入れるね。コーヒー飲まない?」

そう声をかけると、

一緒にいた人は、
少し不機嫌そうな口調で言いました。

「え? 今日コーヒーも飲むの?」

以前なら、
その不機嫌そうな態度に、
一瞬で胸の奥がきゅっとしていたと思います。
私も相手と同じような、不機嫌な態度にぱっと変わっていたかもしれません。

でも、その日は、そんなことは起きませんでした。

その不機嫌さを、
ただその人の付属品のように見ている自分がいました。

本当に不機嫌なのではなく、
そう振る舞わなくてはいけない何かの名残のようなもの。
身体は、すでにそう分かっているみたいでした。
こわい感じは、まったくなかったのです。

むしろ、
そんなふうにしているその人に対して、
どこか温かい気持ちが湧いていることにも気づいていました。

「別に今日じゃなくてもいいよ」

と返すと、

「え? 行きたいの? じゃあいいよ」

という、
少し早口で強めの口調が返ってきました。

「そうね、せっかくだから入ってみようか」

と、私はごく自然に促していました。

静かな店内で珈琲を飲み、ひと口すすった瞬間、

「はぁー、美味しい」

と、ふたりの声が重なって、
思わず目を合わせて、小さく笑い合いました。

はぁーと深く息を吐いたとき、
肩の力がすっと抜けて、
椅子の座面が身体を心地よく受け止めてくれるのを感じました。

「リアクション、ありがとうございます」

と応えてくれた店主の方に珈琲のことを質問したりして、

その場の空気感や、
そこにいる人たちに、
自然と身を預けられるような感覚がありました。

ほどけたまま、何も足さなくても、
ただそこにいるだけで十分でした。

以前なら反応していたはずの場面で、
揺れずにいられたこと。

そして、
そのことを特別だとも思わず、
静かに受け取っている自分がいること。

それがじんわりと、
あたたかく感じられたのです。

人の機嫌に影響されやすいのは、「弱さ」ではないのかもしれない

人の不機嫌や強い反応に触れると、必要以上に緊張してしまったり、
相手の気持ちを背負い込んでしまったり、
気づかないうちに自分を責めてしまうことがあります。

それは弱さではなく、

これまでの経験の中で身につけてきた、
大切な反応だったのかもしれません。

誰かの表情や声の調子を敏感に感じ取ることは、

かつて、
自分を守るために必要だったこともあるでしょう。

けれど、
安心できる関係や体験が、少しずつ積み重なると、
相手の感情と自分の感情を、
以前より穏やかに分けて感じられる瞬間が訪れることがあります。

「相手は相手のままでいていい」

「私は私のままでいていい」

そんな感覚が、
頭で理解するより先に、
身体の深いところから立ち上がってくることがあります。

安心感は、
考え方だけで身につくものではなく、
身体の実感として、
少しずつ育っていくものなのかもしれません。

もし、

人の機嫌に敏感になりすぎて疲れてしまう。

いつも相手に合わせてしまう。

そんな感覚があるなら、
そこには、
あなたを守ってきた大切な理由があるのかもしれません。

その反応を急いで変えようとするのではなく、

まずは、

「どんな時に緊張するのだろう」

「何を感じ取ってきたのだろう」

そんなふうに、
一緒に眺めるところから始めてみませんか。
市ヶ谷/麹町/四ツ谷エリアの落ち着いたオフィスで、お待ちしています。

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この記事を書いた人
町田美佳|臨床心理士・公認心理師|マチダ心理臨床オフィス(市ヶ谷・麹町・四ツ谷)

愛着や人間関係、生きづらさ、支援職の悩みなどについて、感情や身体感覚を大切にした心理カウンセリングを対面とオンラインで行っています。

町田美佳(臨床心理士・公認心理師)

臨床心理士・公認心理師。AEDP®Level 3セラピスト。25以上、医療・教育・行政領域で心理支援に従事。CBT、AEDP®を学び、市ヶ谷・麹町・四ツ谷エリアで対面およびオンラインの心理カウンセリングを提供。対人支援職向け体験会「静かな共鳴を味わう時間」主宰。

https://mikamachida.com
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