ああ、こういうことを、一緒に味わいたかった|ある体験の場で起きたこと

ある体験の場でのことです。

その日私は、

「一緒に何かを共有できることへのワクワクが、自分の中にあるだろうか」

と確かめてから、その場に入りました。

以前から、
相手が感じたことや心が動いたことを、
一緒に見つめたり、味わったりする時間は好きでした。

でも、新しい場や慣れない状況では、

「安心できる場をつくらなくては」

「参加した方に何か持ち帰ってもらわなくては」

そんな思いが前に出てしまい、

気づけば、
自然にやっていたはずのワクワクや喜びから、
少し離れてしまうこともありました。

本の一節に出会い、ずっと大切にしてきたものに意味が与えられた

その少し前、
AEDP®2.0(注)を読んでいて、

存在そのものへの喜び(intersubjective delight)が、
人の回復や変化に深く関わる、大切な要素のひとつである

という記述に、
私は強く心を動かされていました。

新しい考え方を知ったというより、
長く支援の中で感じてきたことや、
自然に大切にしてきたものに、
あらためて意味が与えられたような感覚、でした。

だからその日は、

「私はこの人たちと、
何かを一緒に味わえることを喜んでいるだろうか」

そこを確かめてから、
場に入りたいと思ったのです。

「一緒にいられる喜び」が、静かにつながっていく

ひとりの方が、
自分の中で心が動いたところを話してくれました。

それを聞いていると、

何に心が動いたのだろう。

どこに惹かれたのだろう。

そんなワクワクと、
感じたことをそのまま差し出してくれようとする姿勢への感謝、
一緒にいられる喜びのようなものが、
自分の中に立ち上がってきました。

どこを見て、
どんなふうに感じたのかを、
たずねていきました。

そのことに、
また自分の内側を見つめながら答えてくれる。

それを受け取り、
またたずねる。

その場で起きていることを確かめ合いながら、
少しずつ、つながっていく感じがありました。

気がつくと、
私の身体は少し前のめりになっていて、
ワクワクが強くなっていました。

そのあと、

「私も同じように感じていました」

と、ひとりの方が柔らかく微笑みながら言いました。

「僕もそうだった」

と、もうひとりの方も、
少し力を込めるように続きました。

ああ。

こういうことを、
一緒に味わいたかったのだな。

そんな喜びと安堵が残っていました。

「理由はわからないけれど、自信のようなものが湧いてきた」

体験の時間が終わり、
最後にみなさんで感じたことをシェアしていた時のことです。

最初に話してくれたその方が、
こんなふうに言いました。

「自信のようなものが湧いてきた。

はっきり言葉にはできないけれど、
“自信”というのが一番しっくりくるような……

理由はわからないけれど、
自信のようなものが湧いてきたのが面白かったし、不思議だった」

その言葉が、
とても印象に残っています。

私は、
「自信を持てるようになった」という意味ではなく、

誰かと一緒に感じたり、
感じたことをそのまま受け取ってもらったりする中で、

その人の中に元々あった何かが、
少し動き出した感覚だったのかもしれない

と感じていました。

何が起きたのかを、
きれいに説明することはできません。

でも、

理由はわからないけれど、
少し力が湧く。

自分の感じたことを、
そのまま差し出しても大丈夫だと思える。

そんな小さな変化が、
人の中には起こることがあるのかもしれません。

その方が見せた、
少しはにかんだような笑顔を思い出しながら、

困っている部分や苦しさを理解するだけでなく、

感じたことや存在そのものを、
誰かが喜んで受け取る体験は、
人の中にある力や健やかさを静かに呼び起こす。

そのことを、

「理由はわからないけれど、自信のようなものが湧いてきた」

という言葉も思い出しながら、
私は、あらためて実感していました。

(つづく)

※掲載している内容は、個人が特定されないよう編集・再構成しています。参加者の方には、匿名化したうえでの共有についてご了承をいただいています。

※注:「Undoing Aloneness & the Transformation of Suffering Into Flourishing AEDP 2.0」
‍  ‍Edited by Diana Fosha, PhD

🌿

こうした「一緒に何かを味わい、感じたことを安心して差し出せる体験」に関心のある方へ。

少人数で、写真などを一緒に眺めながら、
心や身体の小さな動きを味わう場を行っています。

👉 「静かな共鳴を味わう時間」について見る

町田美佳(臨床心理士・公認心理師)

臨床心理士・公認心理師。AEDP®Level 3セラピスト。25以上、医療・教育・行政領域で心理支援に従事。CBT、AEDP®を学び、市ヶ谷・麹町・四ツ谷エリアで対面およびオンラインの心理カウンセリングを提供。対人支援職向け体験会「静かな共鳴を味わう時間」主宰。

https://mikamachida.com
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